はじめに

「オタク」とは、漫画、アニメ、ゲーム、アイドルなど特定のサブカルチャー分野に深く傾倒し、時間や金銭を集中して消費する人を指す言葉です。1980年代に生まれたこの呼称は、元来の蔑称的な意味合いから転じ、近年は熱狂的な「ファン」や「マニア」とほぼ同義で、昔よりも肯定的な意味で使われることが多くなりました。

一方「MBA(Master of Business Administration)」とは、経営戦略、マーケティング、財務会計、組織論など、企業経営に必要な知識を体系的に学び、実践的な課題解決能力やリーダーシップを養う大学院修士号を指す言葉です。「経営学修士」と訳されることが多いですが、当法人ではより本来の目的に沿った「経営管理学修士」という訳を提唱しています。

一見すると対極にあるように思える「オタク活動」と「ビジネス・経営学」ですが、実はこの二つは極めて親和性が高いと筆者は考えています。

というわけで、今回は「オタクこそMBAを取得すべきである」という、少し奇抜なテーマで語らせていただきたいと思います。

筆者の経歴

何を隠そう、筆者自身が生粋のオタクであります。

エヴァンゲリオン全盛期に”中二病”を発症した頃から現在に至るまで、漫画・アニメ・ゲーム・PC・ラーメン・推し活…筆者はだいたいこれらの要素で構成されていると言っても過言ではないでしょう。清々しいまでに「ザ・オタク」という人間です。

そんな私が、大学卒業後システムエンジニアとして長年勤務している最中に、ひょんなことからExeJapan Business Schoolと出逢ってMBAを取得し、それは人生の大きな転機となりました。

単なるエンジニアから、MBAを武器に転職し、プロジェクトマネージャー等を経て、現在は個人事業主として独立を果たすに至っています。

MBAホルダーの意義

こう書いてしまうと「MBAさえ取れば人生バラ色になるのか!」と勘違いされてしまいそうですが、人生そう甘くはありません(笑)

確かに転職で有利に働いたことは間違いありませんが、MBAを取得する最大のメリットは、その学習の「プロセス」にこそあります。

MBAはしばしば「運転免許証」に例えられますが、「ビジネスという荒波を渡るための基礎知識と技能を持っていることを証明する」という意味で、実に的を射た表現だと思います。つまり、単に持っているだけではペーパードライバーであり、実際に仕事で活かして初めて意味があるのです。

MBAのカリキュラムで経営戦略、マーケティング、財務会計、組織論といった多岐にわたるビジネスの普遍的なフレームワークを体系的に学び、そこで得た知識を実際の仕事で活用する。このサイクルを回すことによって、単なる知識ではなく、自身のスキルとして定着させることが出来るのです。

また、MBAのスクールには有名大企業の部長や営業マン、医者や士業まで、実に様々なバックグラウンドを持つ学生たちが集まります。普段の生活では決して出逢えないような人々と対等にディスカッションをするという稀有な経験は、自身の視野を大いに広げてくれます。さらに、そこで培われた絆は強く、卒業後も続くため、その後の人生をより豊かなものにしてくれることでしょう。

オタクとMBAの親和性

では、なぜ「オタクこそMBAを取得すべきである」という考えに至ったのか。それは、オタク活動とMBAの学習プロセスには、多くの共通点があるからです。

そもそも私がMBAスクールを知るきっかけとなったのは、システムエンジニアとして働いていた頃、顧客のCIOから「もし『顧客にもっと満足して欲しい』と思うのなら、システムのことだけ知っていてはダメだ。顧客のビジネス全体を理解する必要がある。私が講師をするビジネススクールでMBAを学んでみないか」と誘われたことにあります。

「相手に満足してもらうなら、相手のことをよく知らないといけない」。とても当たり前のようでいて、目の前の業務に忙殺されているとつい忘れがちな視点でした。

そして「オタク活動」というのも、実のところ「好きなことをもっと知りたい」という純粋な探求心から始まるものです。その対象をより深く知るために、関連書籍を読み漁ったり、イベントに足繁く通ったり、時には海外の一次情報を得るために自発的に語学を学んだりもします。この「一つの対象を深く掘り下げる圧倒的な熱量と行動力」は、ビジネスにおける徹底的な情報収集や市場分析(リサーチ)そのものと言えるでしょう。

オタクよ大志を抱け

一昔前は、一つのことにのめり込む「オタク」は、社会的にあまり良いイメージを持たれていませんでした。しかし近年では「推し活」という言葉が一般化し、オタク活動の中にある「情熱」が肯定的に捉えられるようになり、一つの巨大な経済圏を形成するにまで至っています(現在は数兆円規模の市場とも言われています)。

その熱量と行動力は、ビジネスの世界でも間違いなく強力な武器となります。ぜひ一度、MBAの門を叩いてみて下さい。「いま自分がやっている仕事は、最終的に誰の役に立ち、どう利益を生んでいるのか」「クライアントの経営層は何を課題と考え、どうすれば真に満足してもらえるのか」「今の組織をもっと効率的かつ有機的に動かすにはどうしたら良いか」——そういった視点から戦略的に行動出来るようになると、まるで高度な戦略シミュレーションゲームをプレイするかの如く、ビジネスそのものが格段に楽しくなるはずです。

そしてそれは推し活においても同様です。愛する作品やアーティストを支える企業のビジネスモデルや、マーケット全体の動向にまで視野が広がり、これまでより一段上の解像度で「推し」のいる世界をより深く楽しむことが出来ることでしょう。

世の中全体を俯瞰し楽しみ尽くす、そんなスケールの大きなオタクに、ぜひなりましょう!

参考文献

文:中野拓/Taku NAKANO
EU Business School MBA
一般社団法人MBA推進協議会 理事
マネジメントI&T 代表(https://mgmt-it.tech/
専門分野:IT全般 / 基幹システム開発、Linuxサーバ運用、クラウドインテグレーション、AI、PM・PMO等
プロフィール:
システムエンジニアとして基幹システム開発に従事。2018年にEU Business SchoolにてMBAを取得し、大手IT企業やクラウドインテグレーター等でPM・PMO等を経て2026年に独立。
現在は自律型エージェント開発やシステム運用自動化等のAI関連事業に取り組む傍ら、一般社団法人MBA推進協議会理事としてMBAホルダーの活躍推進やビジネススクールとの連携強化に努める。