今回は、医療業界に身を置きながらMBAを取得した立場と観点から、医とMBAの関わりについて個人的な考えをお伝えしたいと思う。

私自身製薬企業出身で、そもそも職場には多くのMBAホルダーがいた。皆意識が高いなと思いながらも、よく考えれば製薬企業の人間は「1. 比較的に高収入」、「2. それなりの時間的余裕がある」、「3.会社からMBA取得することを求められている」という背景があるため、MBA取得を目指す層が多い業界というのはある意味では当然とも言えるかもしれない。もちろん業界の構造的な変化として、SVOからの脱却によるMR(医薬品情報担当者)の減員という現状があり、開発パイプラインは「低分子化合物」から「バイオ医薬品」へとシフトチェンジし、さらにはCDMO(医薬品製造受託開発・製造)へのビジネスモデルの転換など、製薬企業に生じている環境変化は激しいということも前程にあるだろう。営業、マーケ、流通、どの部門の人間も其れなりの武器を持っておきたいのだ。

実際に自分もMBAスクールに行くと他社の製薬企業の人間との出会いが多くあった。しかし、それよりも印象的だったのは、医師・医療従事者も多くいたということだ。色々話を聞くと、ベンチャー的な精神から通われている方もいれば、医療従事者も経営学をわかっていないとこれからはやっていけない、という危機感をお持ちの方も一定数いた。確かに日本の医療経営は変革の時期を迎えている。国民皆保険制度はWHOで称えられるほど素晴らしいシステムだが、一方で日本の財政圧迫の弊害ともなっていることは周知の事実。一般病院の41.2%が赤字経営するであることが平成28年の独立行政法人福祉医療機構により調査報告され、年々その赤字比率は増えている。医療従事者の長時間労働、若手医師による大学病院の医局離れなど、医療現場におけるマイナス要因はいくらでも挙げられる、やはり構造改革をしなければ将来的な展望としては厳しいのだろう。

いずれにせよ、この長寿大国の日本を支える根幹のシステムが、プラットフォームそのものを見つめ直さなければならない時期に来ている。経営という利己の精神と、医療という利他の精神。このダブルスタンダードを成立させるために、MBAという新たな知見を身に着けんと努力している医療従事者が現れているという事実は、厳しい環境の中での光明と言えるだろう。それがたとえ拙い知識であったとしても、ひとつの階段を上がれば自ずと次のステージが見えてくるものである。学位取得はその一歩になりうるのかもしれない。

文:城戸崎祐馬/Yuma Kidosaki
Anglia Ruskin University MBA
一般社団法人MBA推進協議会 理事
プロフィール: 専門分野:ヘルスケア/ウェルネス
大手内資製薬企業を経て外資製薬企業のビジネスコンサルタントのローンチ、責任者を務める。現在は戦略コンサルファームにて、様々なライフサイエンスの課題解決に従じる。既存の保険診療だけではなく、自由診療に対するアプローチも行い、「経済合理性と医療倫理の両立」を目指す。